Mémento homo2
司祭の建てた建物達は増え続けちょっとしたミニチュアの村を作るほどになったが、教会はいつまで経っても工事中で、中に入れるのは司祭だけだった。なので村人達は教会の外に建てられていたこの聖母マリア像を訪れてはそこで祈ることで満足していた。
祈りを捧げる村人達の視界の端には、いつもその凝ったデザインをした建築中の教会の隅で何か工具を握っては額に汗をかく司祭の姿が見えたが、物に遮られよくその姿は見えない。公務中の司祭を邪魔するまいと、村人達はいつも慎ましく祈りをすませると静かに司祭の領地を去っていたので、彼がなにをしているのかは誰もわからずじまいだった。
.......時を経て、この聖母マリアを乗せた十字架が、通常のものではなく逆十字を描いていることに気づいたのは、信仰心厚いのが当然の当時の村人達ではなく現代人達だった。
この聖母マリア像は司祭が直々に発注したものでありわざとこのデザインにしてあることは明白である。しかし、なんの理由で神に反する逆十字架なのか、そしてそもそもなぜ貧村の司祭が急に領地を開けるほどの大金を得たのか?